p氏の異常な愛情 または……

映画とか趣味とか色々。

親御さんに読んで欲しい中古のゲームと買い与え

 お久しぶりです。書きたいと思った事があったので久しぶりに筆を取りました。

発端はこちらのツイート。

 さて不肖p、疲れると古本市場やゲオみたいな中古ゲーム屋さんに赴いては無数のタイトルの山に埋もれる事を良しとする性分がございます。気になっていたタイトルや知らないタイトルを手に取ってはパッケージを眺め、買うでもなくそっと棚に戻す。この一連の動作が大好きなのです。きっと子供の頃に電気屋さんに行った時、目の前にたくさんのソフトがあった、あのわくわくする原風景をなぞっているのでしょう。大人になれないな、なんてにへらと笑う一コマです。

 閑話休題。ここ一月くらいの多忙につき心労が祟った私は、刺激の少ない、のんびりとしたゲームを探しに古本市場へ通っておりました。

▲こんな具合

 あれでもない、これでもないと悩みながら、でもその過程を楽しんでいるとふと声が聞こえてきます。

「お父さん、うちにポケモン無いから買いたい!ポケモン!」

  どうやら子連れの様で、ふと目をやれば父と子が二人。微笑ましい光景でした。お子さんの方はゲームを嗜むのか、アルセウスいいな!でもソードもいいな!あっこっちにカービィある!とはしゃぎながら中古の棚に目を輝かせています。幼い頃の私はあまりそういった事を口に出さない子供ではありましたが、ゲームソフトの棚の前に行った時、本当に心が躍った記憶を思い起こさせるには、それは十分でした。

「これだったらママとも遊べるかな?」

「あんまり難しいの買ったら遊べないぞ。」

  和やかな会話が聞こえてきます。一家みんなでゲームする仲の良い家庭なのかなぁ、だとか。楽しいよね、ゲーム選んでる時間。僕もそうだったよ、だとか。会話の節々に聴き入りながら色々な事を考えつつ、私も棚漁りを続けます。

 しばらくすると「じゃあこれにする!」と声が聞こえたので私はちらとそちらを見ます。楽しそうにしていた彼が選んだ一本が何だったのか、とても気になったので。彼の手にあったのは『ポケットモンスターソード+エキスパンションパス』でした。

 けれど、その選択を目にした時、私はひどく頭を抱えたくなってしまいました。ここで冒頭のツイートへと回帰していきます。そう、ポケモンを買うのであれば、あと4週間すれば最新作の『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』が発売されてしまう。

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 この事実があった上で、今彼がそのソフトを買ってしまうのは本当にベストな選択であるのか、私の中にわだかまりが生まれます。

 もし彼が、学校でポケモンが流行っているからその話題に加わりたくてポケモンを欲しがっていたらどうしよう。学校の子ども達が『ソード&シールド』を数年前に買っているのであれば、遠からず『スカーレット&バイオレット』へと乗り替えていく事は想像に難くない。みんなは最新作で遊んでいるのに、自分は一世代前の古いゲームで遊んでいるから微妙に話についていけない。夕暮れ、友達の家からの帰り道。横で見ている楽しかったあの時を反芻して、でも自分の家にはそれが無くって。そんな羨望と哀愁をないまぜにした感情を抱えて自転車を走らせる。それは後から見れば懐かしい思い出にはなるのでしょうが、その一時はとても寂しい事でしょう。

 勿論、『ポケットモンスターソード』は初めて触れるポケットモンスターシリーズとして素晴らしい体験ができるゲームです。主旨から逸れたガラルの冒険についてここで詳しく語る事は避けますが、一人で遊んでも楽しい事は約束できます。ですが、一人で遊んでいて楽しい事と今誰かと一緒に同じゲームで楽しむ事。それとこれとは楽しみの種類も質も違うではありませんか。

 子どもにとってゲームは高級品ですし、そう易々と次から次へ買って貰える訳ではない。それ故に、買って貰ったその一作が褪せない記憶の1ページだったり、人としての根っこに関わる事があるのです。私はゲームが大好きです。幼い頃からそれらを通して得た記憶や情緒が、決して小説や映画に引けを取らない大切な宝物だと胸を張って言える程度には。だからこそ、財布の紐を握っている親御さんには、ゲームという媒体がそれ程の財産になり得る事についてもっと自覚的にあって欲しいし、何が起こるかを考えて一作を子どもと一緒に選んであげて欲しい。その一作を通して得た記憶が子ども自身に何を経験させるのか、買う前に一歩だけ立ち止まって考えてみてあげてください。

 

 こうして膨れ上がっていくお節介な思考は、あわやその子連れへと「買うのあともう少しだけ待ってあげてくれませんか?新作、もうすぐ出ますから。」と話し掛ける一歩手前まで私の事をせっつきます。 

 しかしながら、今の私は店員の印であるエプロンも何も付けていない、たまたまそこに居合わせただけの中古ゲームを探しにきたオタク。彼の住む家の教育方針がわからなければ、買いに来た事情も何もわからない。あんなに楽しそうな彼の選択に水を差すのも申し訳なければ、見ず知らずの子連れに話し掛けるのも不審な話で。

 

その場はただ、見送るのみでした。

 

 それでは皆様並びにいつかの彼へ、良き日々を。