p氏の異常な愛情 または……

映画とか趣味とか色々。

『文体練習』で本当に文体練習をしてみよう

 7回目に漕ぎ着けた。エヴァンゲリオン、というテーマを扱うに際して持っていかれる気力が想像以上だったからか、完全な連続更新とはいかなかった事は誠に遺憾である。しかしながら、毎日雑記帳へと向き合う習慣がついた事は我ながら評価すべき点であろう。終わりよければ全て良し。滞る事なく本日も更新したい次第である。


 本日は割合早めに主題について述べておこうと思う。

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 本。


 もう気がついているとは思うけど、今回の記事で僕はあからさまにある物を変えている。簡単に言うなら、文章のテイスト。要は文体って奴だ。文体。いっぱしの物書きである僕とはいえ、案外これには拘っているんだ。名は体を表すと言うけれど、文体についても同じことが言えるんじゃないかなって。文章を見れば案外わかると思うんだよ、その人の読書遍歴とか、性格とかさ。

 さういふ訳で、今日はちよつと趣向を変へて、文体で手遊びをしながら作品の紹介をしたく思ふ。何、狂乱したといふ訳ではない。これも作品紹介の前振りの一つである。

 そんなこんなで私が今日紹介するのは、『文体練習』。フランスの小説家、レーモン・クノー氏が執筆した小説ですね。後述しますが、正直なところ、この作品は小説というより実験的作品と呼んだ方が正しいのかもしれません。しかしながら、文章が好きな方ならば、きっと気に入る事でしょう。

 作品と作者については敬意を表する為に、一時的にいつもの文体に戻しました。続けてお読みください。

▲文体練習。この記事のノリをもっと丁寧にやっています。


 説明を続けるわね。『文体練習』の内容自体は、ざっとこうよ。

『ある日、バスのなかでソフト帽をかぶった26歳くらいの男が隣の乗客が押してくるので腹をたてるものの、その口調はたいした剣幕ではなくて、別の席があくとそそくさと座る。その2時間後、サン・ラザール駅前のローマ広場でその男をまた見かけた。連れの男がいて「君のコートにはもうひとつボタンがいるね」と言っているのが聞こえた。』

 どうかしら、小説と言うにはあまりにどうでもいい内容でしょう?けれどね、この本の面白いところはその書き方であって、内容ではないの。クノー氏は、この内容を全て異なる99通りの書き方によって表したのよ。どう?面白くないかしら?


 この作品についての大まかな内容です、以上が。これでご理解頂けた事でしょう、私が今回文体で遊ぶ理由について。つまり、私にとっての文体練習になっている訳です、この記事が。解説を加えるならば、これは文章ですね、倒置法だけで書く。正確に扱えているのかどうかについてありませんが、絶対的な自信は。余談ですが本編にあった気もします、この書き方は。

 文体を用いた。6つ用いた。文体を変える。これを続ける。続ける事は難しい。アイデアは有限だ。限界が来る。3000字は書く。私は諦めない。

 しかし、こうも転がる様に車を乗り換える様な事を日が昇って沈むまでの間にやっていると、意識の主体たる存在の、文章における書き癖を人混みの中に落としてしまった様な気分になってくる物で。組み上げてきた積み木のお城を笑顔でひっくり返して遊ぶ様な事だと分かっていても、案外こうやって文章をしたためていると、どれが贋作でなかったか、という事をついうっかり記憶の彼方にやってしまいそうな気もします。

 ところで、序盤はご理解頂きやすい文体の改変を行っておりましたが、説明近辺から突如方向性を変えました事を深くお詫び致します。皆々様におかれましては、ここまでお付き合い頂けていらっしゃいますでしょうか。現状半分近くですので、残り半分程お付き合い頂ければ恐悦至極の限りにございます。

 だから……その……なんと言いましょうか……文体ですね……。はい、文体の話を……いや本当に文体の話でいいのでしょうか。やっぱりもっと他の話をしたほうが……?でも私がしたいのは文体の話で……だから……続けます……

 あたしゃさっきも言ったんだけどね、文ってのは読みさえすれば人となりは分かるもんさ。例えばそうだねえ、あんたにも経験があるだろう?この前まで読んでた作家の文章がついつい移っちまうとかさ!作家ってのは人を写す鏡だよ。その作家を選ぶなら、その人がどう言う人かってのも自ずと見えちまうもんさね。

 もちろんだけど、あたしゃそれだけで言ってんじゃないよ。そうさね、丁寧な文章を書く人はなんだか性格も丁寧な気がするんだねえ。こらおよし!丁寧じゃない文章を書く人が性格が丁寧じゃないなんて言った覚えはあたしゃ無いよ!

 話、続ける。私、話、する。私、文体、独特、言われる。他人、私、文体、見た。他人、私、言った。見る、お前、分かる。私、嬉しい。再度、私、言う。私、物書き、端くれ。私、文体、気がかり。私、それ、個性、認められる。これ、私、本当、嬉しい。嬉しい、事、嬉しい、言う。恥ずかしい、山々、勝つ、嬉しい。

 貴方、文、書く。貴方、癖、ある。貴方、個性、見つかる。貴方、それ、抱える、生きる。それ、素晴らしい。文、ツール、使える、誰でも。敷居、低い。自己表現、簡単、お勧め。

 たくいつ して きた の も みめとる の ですが、 あと、 2 しるゅい で 15 しるゅい に なのるで いま しらばく おきあつい くさだい。

 けそいつ に やる には ななかか はそっうょりく も たょりいく も ひよつう な きじ を けかいく してしたまっな、と くょしう して います。

 そろそろ頃合いだ。そう思った僕は、総決算への準備を進める。これまで書いたものは、所詮僕のお遊びに過ぎない。ここまで付き添ってくれた読者がいるとすれば、きっとその人達に僕は目一杯の感謝を伝えなければならないだろう。懇々と打ち込んできたこの文章が誰かの目に触れれば十分、いや、十二分に嬉しい。本当なのだ、嘘偽りはない。最後に一つ、とびきり仰々しい文体を用意してこの文章を締めくくろう。そこからは解説だ。

 おお、おお、賢明なる読者よ!この欠落した穴を埋める為だけに書かれた文章を尚も読むか!その根気と親切味を讃え、今一度感謝の念を述べよう!ありがとう!ありがとう!諸君のゆく道に幸あらん事を!明日も生きて、良き日々を!


 という訳で、いい加減文体を元に戻そうかと。最後に先述通り、大まかな解説です。箇条書きにしておくので、なるほどそういう意図だったのね、的に消化して貰えれば。

・文語体。筆者はレポートとかだとよく使ってます。

・一人称主観(男) ライトノベルとかにいそう。

・近代純文学っぽい言葉遣い。自信がないので短いですね。

・いつものやつ。いつものやつです。

・一人称主観(女) 個人的にダンガンロンパの霧切さんっぽいです。

・倒置法。本文通り。

・文章のヨクト。主語と述語だけで作ったつもりです。

・名詞を使わず、比喩だけで文章を書く。どうしようもないものはそのまま使いましたが。

・敬語。超丁寧に書いたつもりです。間違ってたらつらい。

・自信がない人。「文体の話を続けます」を傘増ししました。

・話言葉(老婆) 千と千尋の湯婆婆みたいになってますね。

・日本語のヨクト。単語だけです。

・タイポグリセミア。2ちゃんで流行りましたよねこれ。

・いつものやつ(小説)。小説用の文体です。下の記事でいっぱい読めます。

・なんなんでしょうねこれ。疲れて勢いで書いた感じは否めないです。ツァラトゥストラとかにありそう。